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世界遺産の間違った知識?

世界遺産の間違った知識?

Photo by ippei + janine


2011年5月に東京都の小笠原諸島が世界自然遺産に登録される見込みが強くなりました。

環境省や林野庁が、小笠原諸島を世界自然遺産の候補地に選んだのは今から8年前の2003年。
昨2010年7月に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の
諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)が現地調査を行っていたとのことで、
この度、IUCNから小笠原諸島は世界自然遺産に登録すべきという見解が発表されました。

これで小笠原諸島が、国内4番目の世界自然遺産への登録がほぼ決定したということで、
関係各位の皆様にはお祝いを申し上げたいと思います。

しかし、世界遺産に登録されてからが本当の勝負です。
世界が認める自然遺産になる以上は、
日本と東京都は責任を持って小笠原の貴重な自然を保護・維持していかなければなりません。

国内の世界自然遺産は、屋久島、白神山地、知床半島とありますが、
どの地域でも世界遺産であるから引き起こされる問題が見受けられています。

問題には、観光客の増加による自然の荒廃という単純なもありますが、
なかには極端に入域が制限されてしまい、
本来は触れ合うことができた自然に触れられなくなるというパラドックス的なものもあります。

世界遺産をめぐる問題のなかで最も顕著なのは、やはりフィールドの過剰利用

例えば、最盛期の屋久島の登山を見てみましょう。
屋久島のトレッキングといえば、縄文杉トレッキングが代表的ですが、
土日には入残数が一日1,000人を超えるにも関わらず道は狭く、1つしかありません。

私も一人で入山したときに縄文杉トレッキングのお客さんの行列を目撃したことがありますが、
まさに“渋滞”でした。

あれでは山を楽しむことができないばかりか、加速度的に自然が傷つけられてしまいます。
また、し尿処理の問題もとても大きな問題です。

私は、それぞれの登山客がばらばらのところで用を足せばそんなに問題はないと考えているのですが、
屋久島でトレッキングをする方の多くはトレッキング初体験という方が多く、
野外で用を足すのに抵抗があることと、そもそも野外での方法を知らないのです。

(そもそも人間のもつ細菌のなかには、山には存在しないものもあるらしく、
人間の数が多ければ、分散しても意味が無いという意見もあります) 

そうすると、おのずと数少ないトイレに人々が集中してしまい、
やがてトイレの処理能力を越え、途上や水の汚染が始まってしまいます。 

他にも、ガイドの急増による登山マナーの低下も問題の一つです。


このように、世界遺産の先輩である屋久島ですら、
多くの問題を抱えたまま何年も“よろしくない状況”が続いていています。

そして、驚くべきことが1点あります。

それは、当事者である屋久島のガイド自身が、入山制限をかけるべきか否か
という議論を2010年に至るまでしていなかったことです。

世界的にみて、世界自然遺産に登録されている地域のほとんどは入域制限がかけられており、
なかには入域するために料金を払わなければならない地域も多くあります。
もちろん、入域するための料金はその自然遺産の保護に活用されます。

海外の世界自然遺産は日本のそれとは比較にならないほど巨大ですが、
それでもしっかり入域制限をすることで、自然を保護・維持しています。

比較的面積の小さな日本の世界遺産は、
他国のそれより厳しい入域制限をかけるべきではないでしょうか。

それこそまさに「Leave No Trace」の精神をまずは世界自然遺産地域から徹底させ、
日本中に浸透させるという試みが必要なのではないかと思います。 

そもそも、世界自然遺産に登録する目的は、その自然を未来の世代にまで残すことであって、
観光地化をしてお金儲けをするためではありません。

しかしながら、こと日本国内に関しては

世界遺産 = 観光地化 = 儲かる

という、とても先進国の考えとは思えない思想が広く浸透しているのは危険なことです。

この“経済効果”が最初にフォーカスされる時代は、もうそろそろ終わりにしませんか?

逆に、世界遺産以外でも自然公園などに指定されると、極端に入域制限がかけられ、
昔からそこに暮らしていた住民が追い出されるという事例や、
追い出されはしなくても、生活の一部である行為(薪割りなど)が
制限されることもあることも忘れてはいけません。

 しかし、自然と人間とはそんなに単純な関係ではないはずです。
そう、はるか古代から人間は自然と支え合いながら生活をしてきているのだから。

特に、日本の里山に見られる人間と自然の関係性には特筆すべきものがあります。

日本国内の自然には原生林は少なく、二次林が多く存在しています。
それらの二次林は人間がある程度手を入れることで維持され、自然のダムなどになります。 

そうした点を考えたとき、私はどうしても世界遺産にすれば良い
という風潮には疑問を抱かずにいられないのです。

とはいえ、世界遺産に登録されるのだから、それだけの価値があるというのも事実。
私は伊豆諸島には行ったことがありますが、まだ小笠原諸島には行ったことがありません。

 これを機に私も小笠原へ…って。
もしかして私が一番世界遺産に踊らされているのでしょうか(苦笑) 

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