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懲りずにトカラに行きました(4) -蝶-

-蝶-

アサギマダラ。
本土では寒い季節に渡りをすることで有名な蝶。
ここ、トカラでは逆に寒くなると渡ってくる。

 ある日、普段は車かスクーターで颯爽と下りていくはずの坂をぼくは歩いて下っていた。
後日紹介しようと思うが、とある沢を登って高原まで出たからである。

 ここ中之島には、海辺の集落2つと、高原の集落1つ、計3つの集落がある。
海辺の集落は「シタ」と呼ばれ、
高原の集落である「ウエ」までにはクネクネとした山道を登っていかなくてはならない。

だから、普通ウエに行くには何らかの移動手段を用いる。
そのため、帰りはおのずと下り坂を気持ちよく下っていくことになるのだ。

 が、今回は沢を歩いてウエまで行ったのだから、てくてく歩いて帰るしかなかった。

不思議な事に、歩いているとふと初めて見る光景が広がっているのに気づいた。
つまり、颯爽と下っていく時には見えない景色が、歩いているからこそ目に入ってきたのだ。

何度も何度も通ったはずのおんなじ道。
なのに、移動手段を変えるだけでこんなに新鮮な気持ちになれるとは。

特に、道の傍らに生えているツワブキの花が印象的だった。
薄暗い林道のなかでも輝くように咲き誇るまっ黄色のツワブキ。
それと、太陽の光を一身に浴びてよりきらめきを増しているツワブキ。
それらはこの島では決して珍しい植物ではなく、むしろありきたりすぎる植物だ。

しかし、いつも走り去っていく道にこうして咲いているそれらは新鮮に感じた。
カーブのガードレールの奥に見える青い海も新鮮だった。

 そして、そのまっ黄色の花の周りには、
たくさんのアサギマダラがひらひらと気ままに空に浮かんでいた。
まるで風に流されるがままのように飛んでいることもあれば、
蜜を吸う花を品定めするかのように飛んでいることもある。

人間から見ると、ツワブキに蜜なんてなさそうなのに…、
彼らは必死でツワブキに自分のストローを差し込んでいた。うまいのかなあ。

ーこんなにたくさんの蝶が渡っていたのか。
ぼくは新しい発見に心を踊らせた。

なにもいつもいつも急いで日々を過ごす必要はない。
時にはこうして、普段歩かない道を歩いてみよう。
そうしたら、もしかしたら新しい発見があるかもしれない。
自然は日々めまぐるしく変化していっている。
ほんの少しの心の余裕があれば、いつでもぼくらはその変化を新鮮に感じられるのかもしれない。

(つづく)

撮影機材:OLYMPUS E-3 + ZUIKO Digital ED 12-60mm f 2.8-4.0 SWD
       + ZUIKO Ditital 9-18mm f 4.0-5.6