司法書士に頼らず、自分で農地の名義変更をする方法
住宅と宅地の名義変更を司法書士に頼んだら、税金も含めてだが30万円くらいかかってしまった。
とはいえ、住宅と宅地に関しては後々のトラブルを避けるためにも、司法書士を通じて手続きをして正解だったと思う。
ただ、農地と山林に関しては特段文句を言う人もいないだろうから、自力で名義変更をすることにした。
本記事は備忘録のため、進捗があるたびに更新していくことにする。
大まかな手順
- 農地の整理をする
- 農業委員会に許可をとる
- 法務局で名義変更の手続きをする
農地の場合は、他の不動産と違って特殊なルールがある。まずは農業委員会に許可を取らなければならないのだ。
これを「第3条」と呼ぶ。農業委員会に質問がある場合は「第3条のことで〜」と言うとスムーズだ。
面倒だなあと思うが、日本の食料生産を担っている農地が正しく利用されるかどうか監視するのは一理ある。
ちなみに農業委員会の許可をとるには、申請する農地を事前に整理しておく必要がある。
ここで言う整理とは、草刈りをしておくとか、耕作をしておくとかという意味だ。
名義変更をするための許可なので、当然まだ自分の名義にはなっていない。
にも関わらず、事前に土地に手を入れなければ農業委員会の審議にすら上げてもらえないというのは大いに疑問だ。
本来の流れとしては、耕作放棄地がある→受取人が農地を活用する計画を出す→許可が妥当だろう。
だが、現実はまったく反対で、耕作放棄地がある→農地を活用する→許可という流れなのだ。まだ他人の土地なのにである。
耕作放棄地を時間と体力と手間をかけて使えるようにした後に、「あれ、こんなに綺麗になったんなら、やっぱりあげない!」とか、元々無料での贈与だとしてとも「やっぱりタダじゃいやだ!」となるリスクは十分ある。
にも関わらず、不法侵入の状態で他人の土地を勝手にいじらなければならないのだ。正直バカげている。
まあ、本来は売るなり贈与するなりしたいなら、持ち主がきちんと農地として整理しておく。というか、農地なんだから整理していて当たり前でしょという考え方というわけだ。間違いではない。
ただ昨今、農地の近くに住んでおらず手を入れられない人が多いからこそ、移住者をあれやこれや、はたまた現金なり補助なりなんなりで移住者の奪い合いをしているにも関わらず、当人が農地を手に入れようとしたらこんなことになる。これが地方移住の現実だ。
さらには、その農地が整備されていると判断するのは農業委員会の独断と偏見によるのも大きな問題だ。
農業には様々な形がある。農薬や化学肥料を使う慣行農法に始まり、有機農業、自然農などなど。
ところが、農業委員会が認めるのはどうやら慣行農業または有機農業だけらしい。本来の農業の形である自然農の場合は、雑草が生えてるから管理してないねで話が終わるのだ。
ぼくが行っている自然農の場合、雑草は駆除対象ではなく共生対象だ。だからわざと残す。だけどそれが理解されない。
せっかく生やした雑草を刈れと言われるのだ。自然農を行っている身からしたら、苦労して育てた作物を無慈悲にも刈れと言われているのと同じである。
だいたい、こちらが工芸作物として育てている物に関しても雑草とレッテルを貼ってくる。まあそこは説明したら理解を示してくれたが、ハナから雑草と決めつけるのは草に対して失礼というものだ。
行政は現場のことなど何にも分かっておらず、ただただ移住者の数ばかりを見ている。現場の人間はただただ、何十年も前に作られて現代に適合していない形ばかりのルールに従って動いている。思考停止というわけだ。
本当に必要なのはそんなことでは無い。
過疎高齢化で問題になっている事象を如何に解決するかが大切なのであって、上辺の数字ばかり見ているようでは本当の地域活性化なんてありえない。
とはいえ、現場の人間は上の言うことを聞かなければならないのだから非はない。だが肌身を持って原稿のルールが現実に即していないことには十分気づいているはずなのだから声を上げる責任はあるだろう。
うちの市長は確かに結果は残しているかもしれないが、あっちゃこっちゃのメディアで某ランキングの「1位を目指しました」と公言しているあたりに関しては、頭悪いなあ、正気かなあ、心配だなあと思う。
なぜなら、上辺だけ綺麗にしていますと公言しているようなものだからだ。
ぼくは知っている。何かのアワードも補助金のコンペも、大切なのは中身ではなく上辺だと言うことを。
とはいえ、ルールはルール。この日本社会で生きるのならばルールに従わなければならない。ルールに従いたくないから台湾に移住したのに日本に戻ってきているのだから、そこは自分が納得しなければならない。
さて、農業委員会で許可を取れた後は、法務局で名義変更の手続きをすればいいらしい。ちなみに山林の場合はそのまま法務局にGOだ。
山林の方は、農地の名義変更をする際に一緒に提出しようと思っているが、山林に関しては所有している期間によって税制的に有利になるので、少しでも早く名義変更した方がいい。
農業委員会に許可をとる方法
多分、市町村によって異なるが、各市町村の農業委員会事務所のウェブページを見れば手続きの方法が記載されている。
今治市の場合は、農地の権利移動というページにまとまっている。
「農地法第3条の規定による許可申請書」が必要だが、それ以外にも以下の書類が必要だ。
- 権利を取得しようとする土地の、法務局で交付される登記事項証明書(全部事項証明書)
- 住民票
- 位置図
- 農業経営調書
ちなみに、上記の書類は個人が新規就農で取得する場合。法人やすでに農地を持っていて耕作をしている人はちょっとだけ変わる。それぞれの場合に必要なものはチェックリストとしてまとめてあるので、それを参照のこと。
これらの書類を持って市町村の農業委員会に提出し、審査してもらうことになる。
ただ、審査の前に現地調査が行われるので、前述の通り、どんなに納得が行かなくてもリスクを許容して農地の整備をしておく必要があることは大前提だ。
そんなリスクも手間も時給も彼らには関係ないことだから。
登記事項証明書(全部事項証明書)の取得方法
これは法務局で1通600円で申請できる。そう、農地が10ヶ所あれば6,000円だ。ちなみに司法書士は職権で無料で申請できるらしい。
ちなみにぼくの場合は10件以上あるのでそれ以上かかってしまう。そこでおすすめなのが、登記・供託オンライン申請システムだ。
オンライン申請をすると、なんと1通あたり500円に割引される。10ヶ所なら1,000円だ。数が多ければ多いほどオンライン申請の方がお得になる。
さらに、オンライン申請をして、受け取りだけは法務局ですればさらに20円引きの480円になる。例えば10通なら普通は6,000円のところ、オンライン申請+法務局受け取りなら4,800円と1,200円も安くなる。
ちなみに、一度に申請できるのは10通までで、それ以上の場合は複数回に分けて申請する必要がある。ただ、複数回にしても手数料が増えるわけではない。
最初に登録だけ済ませてしまえば、法人の登記簿謄本の取り寄せなんかもできるので非常に便利だ。
位置図の準備のしかた
位置図というのは、要するに農地がどこにあるのかを示すためのものだ。農業委員会が実地調査する時に場所が分かればいいだけなので、Google Mapでもいいらしい。
ただ、Google Mapだと農地の境界線が分からないので、Mapple法務局ビューアを使った方がいいだろう。
スマホからもアクセスできる上、スマホのGPSを使って現在地も割と正確に出せるので、超便利だ。電波さえあれば山林の境界線も割と正確にわかる。
Mapple法務局ビューアで該当する場所が入るようにスクリーンショットを撮影してカラー印刷すればいいだろう。まだ提出していないから分からないけど。
農業経営調書について
他に農地がないような新規就農者の場合は、農業経営調書を準備しなければならないのだが、これに関しては今治市の農業委員会事務所のウェブページからダウンロードすることができなかった。
が、そのことを電話で伝えたらすぐにメールで様式を送っていただくことができた。おそらく各市町村ごとに農業経営調書の様式は異なると思うが、今治市に関してはかなりざっくりとした内容で良かったので、それほど大きな障壁にはならないだろう。
農業委員会に資料を提出する
準備ができたら、資料を農業委員会に提出して審査を待つ。ちなみに今治市の農業委員会は月に一度しか開催されず、申請書の締日は毎月15日なので注意が必要だ。