笛吹川(後編)
と、いうことで、
日曜日は「ヌク沢(温沢)」という沢に行ってきた。
上流部に3段260mの大滝がある沢だ。
知っている人は知っているけど知らない人は知らない。
「沢登り」という登山を知らない人にはあまり興味がないかもしれないが、
この沢に260mの大滝を登るために沢山の人がやってくる、
といえば、多少は興味がわくのではないだろうか。
ちなみに、沢登りとは、その名の通り、
沢を登って最終的にその沢の始まる最初の一滴が
見つかる場所まで遡っていく登山スタイルのことだ。
夏にやるには最高の登山である。
道幅の広い登山道の横にヌク沢はある。
ちゃんと「ヌク沢」と書いてある看板まであるので親切だ。
東沢から2時間くらいかけてこの沢の合流地点まで引き返してから遡行を開始した。
始めは堰堤である。これを越えると綺麗な沢が続いていて、時々真っ白な石英が転がっている。
水量たっぷりの5~6mほどの滝を快適に登っていくと
日差しも徐々に谷に入り始めて気分は上々だ。
ところが中流部あたりに来ると、突然真新しい巨大な堰堤が現れた。
遡行図には載っていないので、ここ10年くらいの間に造られたのだろう。
仕方がないのでちょうど合流している登山道に上がって、途中の踏みあとを頼りに乗り越える。
これくらいなら我慢できたが、その後も4つほど連続して堰堤が現れたのには閉口した。
カンベンしてくれっ。
ようやく堰堤地獄が終わったかと思うと、
沢はだんだん荒れてきて倒木が何度も道をふさぎだす。
どこかで分岐を間違えたかな、と心配していると100mの大滝が現れてくれた。
傾斜が緩いこともあって、下からは全貌が見えないが、間違いないだろう。
とくに難しい登りではないのでグングン登っていく。
が、ちっとも落ち口にたどり着かない。さすがに100mは長い。
ようやく終わったかと思うと、ついに80mの大滝が堂々と行く手をふさいだ。
しばらく登るか捲くか考えたが、時間の関係もあって右から捲くことに。
しかしこの沢にやって来る人はたいがい滝を登りに来ているようで、
捲き道の踏みあとはあまり明瞭ではなかったし、意外に悪かった。
途中で仲間が谷底に滑り落ちそうになった時はさすがに焦った。
その後は、もう尾根に上がっちゃえ、と思って尾根よりに登っていく。
だいぶ登ったな、と思ってフト左を覗くとすぐ横に沢が流れていた。
尾根に行くつもりがキレイに捲いてしまったらしい。
よくよく考えたら尾根に行き始めたところから一気に160mも高度差があったのだから、当然か。
もうみんな疲れているので谷の横になぜかついている踏みあとやら鹿道やらをたどっていく。
突然雷鳴。どしゃ降りの雨。
下山したときはもうとっくに終バスの時間は過ぎていた。
そういえば、下山途中にハナビラタケを見つけた。
去年はマスタケを見つけている。
笛吹川に来ると必ず食用キノコが見つかるのはなぜか。
それでもこの戸渡尾根の下山はキノコを見つけてもやっぱり、ウンザリする。
(おわり)