第1節 トカラ列島の気候
トカラ列島は亜熱帯気候
アジア大陸東岸の北緯30度付近に位置するトカラ列島の気候は、
ケッペンの気候区分に従うと亜熱帯気候である。
年平均気温は鹿児島市と比較すると2~3℃高い。
特に冬の気温が高い無霜の地帯であ る。
したがって、トカラ列島では霜の影響を受ける本土とは異なり、
亜熱帯性の作物の栽培が可能で ある。
しかし、口之島や中之島の日の出地区など
標高の高い地域においては冬季に霜が降りるため、 その限りではない。
なお、中之島の御岳では冬季に冠雪がみられることもある。
降雨は5~6月の梅雨期に極端に多く、
7月に入ると急に少なくなるのが特徴である。
台風の常襲地帯でもある。
また、周辺に黒潮が流れているため周辺海域の水温は高めで、
トカラ列島の海域は黒潮によるサンゴ礁分布の北限となっている。(4)
年間降水量は3,163mm、年間平均気温は19℃である。(5)
北トカラと南トカラ
トカラ列島は先述したように南北に162kmと長いため、
北側の島と南側の島では気候に大きな変化があると考えられるが、
トカラ列島の気象情報は中之島にあるアメダスでしか知り得ないので、
詳細はわからない。
しかしながら、仮に動物地理学上の重要な境界線である渡瀬線を
挟んでトカラ列島を「北トカラ(悪石島以北)」と
「南トカラ(宝島以南)」と便宜上分けると、
北トカラと南トカラとでは、 景観に大きな違いが見られるのは確かである。
たとえば、北トカラには
南国をイメージさせる植物であるアダンが目立たなく、砂浜もないため、
本土の離島という印象が強いのに対し、
南トカラでは白い砂浜にアダンがところかまわず生えている、
といういかにも南国の島というイメージを持っている。
むろん、これは単純な気候の変化によるものだけではなく、
北トカラの島が火山島で、南トカラの島が主に隆起珊瑚礁によって
形作られた島であるということも大きく関係している。
しかし、口之島 と中之島のサンセベリア栽培と、
宝島でのサンセベリア栽培に着目して比べると、
口之島と中之島ではアラレ対策のビニールハウスを建てているのに対し、
宝島では建てていないという違いがある。
これは現地の島民の証言(6)によると、
宝島ではアラレが降らないからとのことであった。
これは標高の違いによるものとは思えない。
なぜなら、口之島でサンセベリアが栽培されている場所は
宝島のそれよりは高いといっても、標高50mほどの場所であったからだ。
気温は標高が100m上がる毎におおよそ 0.6度下がるが、
仮に口之島のサンセベリア畑の標高が海抜50mの場所であり、
宝島のサンセベリア畑 の標高が海抜0mの場所であったとしても、
単純に考えた場合0.3度しか変化がない。
このことから、 北トカラと南トカラとでは、
アラレが降るか降らないかを分かつ程度の気温差があるものだといえるだろう。
したがって、トカラ列島の自然環境に対して考察を行う場合には、
島毎に考えなければならないといえる。
[box_green]コラム
本などを読めば、トカラ列島の気候については、
ある程度知ることができます。
しかし、実際の気候は、島ごとに大きく異なります。
そこで、トカラ列島に旅行する際や、
釣り、ダイビング等をしに行く際は、
島の出張所に実際の天気を聞いてみるべきでしょう。
また、天気予報は、北トカラに関しては「屋久島」の天気を。
南トカラに関しては「奄美大島」の天気を参考にすると良いです。[/box_green]
[box_yellow]脚注
4 東海貞義・佐藤九穂江・花輪伸一編「WWFネイチャーシリーズ(1)トカラ列島」 1994、WWFJapan、p.10
5 気象庁発表2003年〜2007年の記録から筆者算出。
6 2008年5月28日、牧口氏。[/box_yellow]