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トカラ列島の今後と、この記事を公開する理由。

マイナス要素こそプラス要素

もちろん、海外援助も必要不可欠なことであるのは明白であるから、一概に私たち国民の行為や関心を否定することはできないし、国外の現状を考えると国内援助も国外援助も優先度を比較する問題ではない。

実際、インドやカンボジアやベトナムで見た世界の現状は実に悲しかった。やがて、私はトカラ列島を知るほど に国内の現状に興味関心を抱くようになった。それと共に私はトカラ列島にある、一見マイナス要素と思われる事柄が逆にプラス要素なのではないかと考えるようになってきた。

例えば、アクセスの悪 さはそのままトカラ列島の文化や自然環境の保全に繋がっているし、観光地化が困難であることは、そのまま観光地化されていない旅行客を十分に満足させうる環境を作り上げている。

トカラ列島、つまり鹿児島県鹿児島郡十島村という自治体を維持していくには産業が不可欠だ。

し かしトカラ列島のような隔絶された地域で産業を行うのはとても難しい。このような場合、他の地域 で行われていることと同じことをしても勝ち目はない。

トカラ列島にある資源を上手に利用してコストを減らし、トカラ列島にだけある資源をアピールしていくことで観光客はもとよりU・Iターン移住者をも誘致していく産業のあり方が有望だといえる。

トカラ列島ならではの資源探し

そこで私は、トカラ列島の特殊な環境下にはさまざまな有用資源・未利用資源があるのではないかと推測し、トカラ列島にある資源の調査を開始した。

それと同時にトカラ列島の基幹産業である農業に関する情報があまりにも乏しかったため、農業の調査も行うことにした。

トカラ列島にある資源を発見するためには様々な季節に訪れる必要があるだろう。そのため2年間かけて春・夏・秋・冬に現 地を訪れ、その都度色々な資源を発見してきた。

もちろん、トカラ列島にある資源は現地に何年間も住んでいる人の方が発見しやすいだろう。

しかし、逆に現地に住んでいる人ほど自分たちの持っているものに対する魅力に気づかないことも多々あ る。

だからこそ、現地に住んでいない者にしか発見できないものもあるはずだと考えた。

事実、島外の人が素晴らしいと感じるもの(原生林や巨大なガジュマル、美しい海、本土からの隔絶性など)の多くは島民にとって当たり前の存在であるため、それらがトカラ列島ならではの資源であるということに気づきにくいこともある。

その地域にある資源の研究をするには現地を何度も訪れることや、長期間滞在することが必要になる。

学生にしかできない社会貢献

当時、私は東京農業大学の学生だった。学生が論ずることができるのは社会に対して有益でないことが多いのかもしれない。

し かし、学生だからこそできることがあるのではないか? 私はそう思った。

つまり何度も現地に行く時間がたっぷりあるという学生の利点を活かした調査をすることが、学生にしかできないことであり、学生にできる社会貢献の1つなのではないだろうかと考えた。

そして、私は学生時代に「トカラ列島における農業生産と地域資源」という論文を書き上げ、結果としてその年の優秀卒業論文に選ばれるという恩恵に授かった。

本コーナーでは、その時に記述した文章を一部改変して、より多くの方々に読んでいただけるようにブログで公開することに決めた。

ただし、本コーナーで紹介することができる情報は、トカラ列島に存在している膨大な地域資源のほんの一部でしかない。

それに、地域興しには慎重で長期間の準備が必要で、そして何よりもたくさんの人々の力添えと知恵が必要だ。

そこで私はこのブログが今後トカラ列島の研究をする人や地域興しの研究をする人の参考資料にもなるように考慮してできるだけ多くの情報を必要と思われる部分だけを厳選して紹介していきたいと思う。

また、このブログを読むことで、トカラ列島と同じような悩みを抱えている自治体にもその自治体にし かない資源があるのではないかということに気付いてもらい、そしてそのような地域での地域興しの手法にはやはり地域資源を活用した手法が有用なのではないかということを示唆したいと考えている。

どうかこの記事ができるだけ多くの人々にトカラ列島への興味を抱くきっかけとなり、トカラ列島 周辺の人々の研究に役立ち、なによりもトカラ列島の人々に参考としてもらえる資料になることを祈りたい。

なお、本コーナーではトカラ列島における地域資源を活用した地域興しを提案するために、トカラ列島の概況と抱えている問題点を説明し、その後、具体的な地域資源を紹介する。

そして、 トカラ列島の農業について詳しい説明をし、最終的にそれまでに述べてきた問題点や 課題を克服するために地域資源をどのように利用するのが効果的なのか、私なりの考えを述べていきたいと思う。

とはいえ、この論文は2009年に記されたものなので、現在では様々な状況や条件が変化していると思う。

あまり細かい間違いの指摘などはご勘弁していただけると助かる…という次第ではある(苦笑)。