台湾映画KANOを一足先に観ました。
[dropcap]で[/dropcap]きるだけネタバレしないようにしたので、KANOが気になってる方や、台湾と日本の歴史に興味がある方はぜひ読んでください。KANO、いい映画ですよ。ちなみに日本では2015年公開予定だそうです。
KANOは、ただの青春映画じゃない。
(台湾では)今更ですが、台湾が日本だった頃に、台湾の高校野球部が甲子園に出場したという出来事を基にした台湾映画「KANO」を観てきました。しかも超レートショーで。台湾って本当に夜更かしな国ですよね。夜中の11時から始まるレートショーとかあるんですよ。終わったら2時ですから。
この映画は、3時間もある長編映画なのですが、一度も飽きさせることなく引き込まれてしまいました。とても良い映画だと思います。
内容は、弱小野球部だった嘉義農林高校野球部(今の嘉義大学)が、「鬼監督」近藤兵太郎にしごかれて、最終的に甲子園の決勝戦まで進出してしまうという青春ストーリーです。
たったそれだけの、映画ではありがちな話なのです。しかし、これが史実であるということ、そして背景に戦争があったことや、当時の台湾の発展、人種差別などが野球部員と共に描かれており、非常に考えさせられる内容となっています。
KANOは、台湾と日本の歴史を学ぶのにもイイ。
そもそも、台湾がかつて日本だったということをどれくらいの人がご存知でしょうか?正確には、日清戦争後の1985年から終戦する1945年まで、台湾は大日本帝国に占領されていましたのです。
ちなみに日本人の功績は賛否両論のようです。統治したばかりの頃は人種差別があからさまだったり、暴力で支配しようとしていたのも事実のようですし、一方、八田与一という技師が、「嘉南大圳」という当時アジアで最大のダムを含む水利工事を達成し台湾の農業を一変させたという功績があるのも事実です。もちろん、その他にも非道なことをしたり、逆に台湾にとって良い改革も行われました。
KANOでは、この八田与一も物語に登場します。当時の台湾がいかに農業で苦労していたのかは、劇中にダムが完成したときの様子から想像できます。また、毎日猛練習をしてお腹を空かせている野球部員のために、周りの大人が必死になって、少しでも多く食べさせてあげたいと翻弄する様子からは、当時の食料事情を伺うことができます。
KANOのチームが日本人、漢人、高砂族(台湾の原住民の日本の呼称)からなる多人種混合であることをばかにされるシーンでは、やっぱり日本人と台湾人の間で差別があったんだな…と思わせられます。
ところで、私がこの映画で一番感銘したのは、当時1930年代の台湾と今の台湾にはあまり大きな違いがないという点です。別に、当時から発展してないよね、という意味ではなく、老街(ラオジエ/オールドタウン)の雰囲気や、そこに屋台がたくさんあるところとか、国民性がなんだか、まあ映画で再現されているだけですが、あまり変わりがなくていいなーと思ったのです。
KANOには色んなテーマがありました。
そんなわけでKANOはただの青春映画ではなく、そこに戦争、日本による占領、人種差別、台湾の農村地帯にあった渇水、努力すれば夢はかなうということ、そして台湾と日本の関係性など多くのテーマが含まれています。
でも、この映画に太平洋戦争が関わってくるのはとても悲しいです…。
日本では来年公開ですが、台湾で観てもいいと思いますよ。なにせ日本統治時代の話なので、登場人物はみんな日本語で話していますから。超レートショーもあるし、雨の日とかいいかもしれませんね。