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コロナ禍における観光爆発〜いま、収束地で何が起こっているのか? そして、収束後に日本が直面するアフターコロナショック〜

今もなお世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないなか、感染源の隣にあり、かつ人の往来がどんな国よりも頻繁だったにも関わらず感染拡大が収束した国がある。台湾だ。

台湾ではいち早く水際対策を行い、徹底した隔離などの措置を取ることが功を制し、4月28日についに100日連続で域内感染者0の記録をたたき出した。

まだまだ油断はできないとは言え、台湾では新型コロナは次第に過去の出来事になりつつある。

感染拡大が治れば、夏を迎えた観光地はさぞ賑やかなことと思われるだろう。それでは、台湾におけるアフターコロナの観光産業はどのように変化しているのだろうか?

本稿では、地域活性化支援を行なっている特定非営利活動法人「村おこしNPO法人ECOFF」(東京都)台湾担当スタッフの宮坂が、台湾屈指のリゾート地「澎湖(ポンフー)」で起きているリアルを時系列でお伝えるする。

澎湖(ポンフー)は、日本の沖縄のような地域

コロナ禍における観光爆発〜いま、収束地で何が起こっているのか? そして、収束後に日本が直面するアフターコロナショック〜
美しい海とビーチ、文化や歴史などには沖縄と共通点が多い

ところで一体、澎湖(ポンフー)とはどこにあるどのような場所なのだろう? この記事をご覧になっている方の中で澎湖と聞いてパッと分かる人は1%に満たないだろう。

過去15年間にわたるGoogleの検索人気度で「澎湖」と「台湾」で検索された回数を比較すると、澎湖で検索された回数は台湾の1%程だからだ。

澎湖は台湾と中国大陸の間にある大小90の島々で構成された離島県であり、日本で言えば沖縄県のような立ち位置にあたる。日清戦争で日本の植民地となり、第二次世界大戦後に返還されたという似たような歴史がある点でも沖縄的な存在だと言える。

もちろん、台湾人で澎湖のことを知らない人はまずいない。澎湖は台湾を構成する「県」の1つであり、人口わずか10万人の地域にも関わらず年間100万人を超える(2019年は130万人を超えた)観光客が訪れる人気の観光地だからだ。

なお、2017年の内訳を見てみると観光客の98%は国内旅行者であることも澎湖の特徴だ。これまでは外国人観光客が少ないことが課題であったが、コロナ禍では皮肉にも国内旅行者が大多数を占めることが澎湖経済の首の皮をつなげることに貢献することとなる。

澎湖(ポンフー)の経済は観光に大きく依存している

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花火大会やライトフェスティバルなど大型イベントで集客をしている

そんな澎湖(ポンフー)の観光シーズンは毎年4月〜9月までの半年間なので、観光業に関わる住民はこの半年間が一年間の所得になる。狭い地域なので、一見すると観光業に関わっていない業種でも間接的に影響を受けている。

例えば、エッセンシャルワーカーの仕事は観光客の数に関係ないと思われるだろうが、皮肉なことに観光客が増えれば当然ケガ人や病人も増えるため収入が減る(澎湖馬公市在住の病院勤務者の証言)

また、地元客が中心の自動車修理業者でも観光客が多ければレンタカーの稼働率が上がるので必然的にメンテナンスや修理の依頼が増える(澎湖県馬公市の自動車修理業の証言)

その他、同じように地元客相手の屋台でも、民宿を経営している住民が宿泊客に気持ち*として振る舞うことがあるので、やはり影響を受ける(澎湖県馬公市の屋台営業の証言)

もちろん、公務員だって観光客が減れば税収が減るので落ち落ちしていられないだろう。建築関係も同様だ。観光客が減れば新しく民宿を建てる人も減るので案件は減るし、住民の所得が減れば住宅も買い手が付かなくなってしまう。

このように、多かれ少なかれ澎湖の住民は観光業に頼った暮らしをしているため、新型コロナの感染が拡大し始めた頃の澎湖にはどんよりとした空気が漂っていた。

*余談だが「気持ち」という言葉は、台湾でも「KIMOCHI」と発音して同じように使われることがある

水際対策に水際対策を重ねた澎湖(ポンフー)

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厳戒態勢の澎湖空港の様子

そのため、澎湖(ポンフー)の県知事が取った動きはどこよりも早く、同時にどこよりも厳しかった。

水際対策の主戦場となる空港にはサーモグラフィーが設置され、少しでも熱のある人は改めて検温を施された。

ほとんどの公共の施設では入り口で検温が行われ、マスクの着用が義務付けられた。

お寺の入り口は1カ所に制限され、床一面に他者と1メートル以上の距離を置くための目安のテープが貼られた。

県の職員は他県に行く場合の届出を義務付け、他県への移動を抑制するとともに万が一の際に接触者を割り出せるようにした。

県内で唯一隔離病室がある軍立の病院の外には、感染が疑われる患者が現れた場合に備え大型のテントが設置された。

そして極め付けは、マスクなしでの外出に日本円で約1万円の罰金を課すという台湾でもっとも厳しい措置が行われた。この措置は中央政府からも懸念の声が上がったほどだった。

この規制の施行初日にマスクを着用せずに外出した観光客が取り締まれるというセンセーショナルな事件があったり、「シュノーケリングするときもマスクするのかよ!?」といったマリンスポーツの盛んな澎湖ならではのツッコミも相次ぎ、数日後にはより現実的なルールに改正されるという珍事もあった。

このように指摘されたらすぐに改善するという姿勢は台湾の良いところだが、何でも見切り発車するのは悪いところだとも言える。

これらは記者が実際に見聞きしたものだけであって、他にももっといろいろな制限があったに違いない。それ以外に台湾で行われた対策についてはよくご存知の読者も多いことだろう。

このような厳しい対策を取った背景には、現職の知事である頼峰偉氏(国民党)が、重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した時にも知事を務めていたからだとも言われている(頼峰偉氏の親戚による証言)

暗雲の広がった澎湖(ポンフー)の先行き

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このような厳戒態勢が取られていた時の澎湖(ポンフー)は先行きが見通せず、筆者の周りの人間は、表情には違いがあれど口を揃えて「今年は大変だ。まあでもみんな同じだからね。がんばろう」と言っていた。

特に記者の民宿の共同経営者は悲痛な表情で見ていられなかった。しかも彼は冬の間だけ日本に短期留学していたのだが、帰台するかどうかというタイミングで日本からの帰国者に2週間の自宅隔離が義務付けられてしまった悲運の持ち主である。自分自身が隔離対象になったこともあり、他の人より当事者意識が強かったのだろう。

2020年4月28日、新型コロナ収束へ

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100日間休むことなく毎日記者会見に臨んだ陳時中・衛生福利部長

そして2020年4月28日、台湾で対策本部が設置されて以降100日連続で台湾内での新規感染者が0となった。そして、陳時中・衛生福利部長(日本での厚生労働大臣に相当)が一日も休むことなく全国民が視聴できるLIVE配信で行なっていた毎日の定時記者会見も最後となり、多くの台湾国民は彼に労いの声援を送った。

なお、陳時中・衛生福利部長はいまや台湾国民のアイドル的な存在になっている。ある病院関係者の証言によると、澎湖の観光を後押しするために訪問した時などは大勢の住民が一目見ようと押し掛けたそうで、このことを同僚に告げるや「なぜそのことを教えてくれなかったのか。知っていたらサインをもらいに言っていたのに」と言われたという。

ちなみに、台湾よりはるかに感染者数の多い日本の加藤厚生労働大臣の同じ時期の記者会見数は陳時中・衛生福利部長の半数にも満たない38回だったことを付け加えておく。(参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/oldindex.html)

フェーズは自粛から振興へ

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これを機に台湾では国内旅行の振興に力を入れ始めることになる。こうした振興策にはどうしても利害関係が発生するので、台湾でも日本のように紆余曲折があった。ただ、記者の知る範囲では、アジアのとある国で提案されたお肉券やお魚券といった、まるで子どもが考えたような振興策が国会の話題に上がることはなかったようだ。

結果、1,000台湾元(約3,600円)で3,000台湾元(約11,000円)分の金券が買える「振興三倍券」に落ち着いた。

これまでもリーマンショックなどの経済危機の際に、いわゆるバラマキ政策が行われたことはあったが、現在の与党である民進党が賢いのは【無料(タダ)】にしなかった点だ。振興三倍券が欲しければ1,000台湾元を払わなければならない。ということは、全国民に2,000台湾元の振興券を配ったって同じだったはずだ。

だが、もし2,000台湾元の振興券を全国民一律に渡してしまえば、単なるバラマキと政権批判のための名目を与えてしまう。実際、国民党政権時にバラマキがおこなれた際には税金の無駄遣いとの批判もあった。また、日本での全国民への一律10万円給付の際に起こった混乱や批判が起こることもない。

振興三倍券が欲しい人だけが、自分で買うだけのことだ。これなら不要な人は元々買わないから、もらったぶんを受け取り拒否するだの寄付するだのといったさもしい議論は起こらない。それに、給付の際に自治体に過大な負担がかかることもないというわけだ。

昨今、新型コロナ対策で台湾の蔡英文政権が各方面で賛辞されているが、それはこのような細やかなところにも手が行き届いているからだ。同時に、彼女を支える優秀な部下には彼女自身の単なるお友達が一人もいないからだということは記者からは言うまでもないだろう。

振興三倍券は、意味がない!?

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ところが、である。

この振興三倍券、現場ではあまり評判がよろしくない。

実際、記者の民宿でも申し訳ないが振興三倍券は取り扱っていない。理由は簡単で、中小企業が振興三倍券を受け取ったら資金ショートするからだ。

振興三倍券には最大の欠点がある。それは、あくまでもクーポン券なので、現金化されて民宿の銀行口座に振り込まれるのはだいぶ後になるということだ。

澎湖(ポンフー)の観光シーズンは4月〜9月の半年間だけ。そして4月〜6月はここ十数年は毎年ロングラン花火大会を開催しており、それが多くの観光客の誘致につながっている。

その後の7月〜9月の間は夏休みの時期になるので、半年間満遍なく旅行者がやってくるという経済システムの上に成り立っているのが澎湖なのだ。

しかし、今年は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために花火大会が7月〜9月に延期された。

1月〜3月までは元々オフシーズンで収入はほとんどない。そして、4月は花火大会が延期されたこととコロナショックのため同じく収入はほとんどない。ようやく5月になって客足が増えてきたが、当然1月〜5月までの固定費はかかっているので今すぐ現金が必要なのには変わりない。民宿1軒あたり5万元の給付金があったが、それではとても足りない。

海外旅行に行くはずだった人達がいっせいに…

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一方、海外旅行ができなくなった台湾人は少しでも旅行気分が味わえる国内離島にいっせいに目を向けた。

澎湖のような離島は陸路では行くことができないため、毎年航空券の座席が争奪戦になることで観光客数が自然に調整されていたが、今年に限っては需要が急増したため各社が通常運行している座席数の少ないプロペラ機からジェット機に機体を変更した上、7月からは中華航空傘下のタイガーエアーまで就航することになった。

すると何が起こるのか?

民宿やレンタカー、アクティビティー等の予約が取れなくなってしまうのだ。

しかも元々は海外旅行をしようと思っていた人達が来るので、予算に余裕がある人が多い。それに加え、振興三倍券は離島だと更に優待が付くので3倍以上に美味しくなる特典がある。すると客層が変わり、消費されるものにも変化が生じてくる。例えば、通常はレンタルバイクがたくさん必要になるはずなのに、レンタカーの方が足りなくなってしまう。

このように需要と供給のバランスが崩れることで様々な歪みが生じると、そのしわ寄せが地元の業者に集中してしまう。今や日本人相手の仕事がほとんどなくなった記者でさえ、お客様からの問い合わせを断り通しになってしまい、お金の発生しない仕事が増えてしまっている状態だ。

黒船の来航

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更に、台湾最大級の旅行会社であるライオントラベルが澎湖に参入したことによる影響も出始めている。これだけ人気の観光地にも関わらず澎湖には地元の旅行会社しかなかった。そのため、わずかな資源を共有できていたし、それを維持するための暗黙の了解も成立していた。

そんなのどかな田舎町に突然、日本で言えばJTBやHISクラスの超大手旅行会社がやってきたのだ。まさに黒船来航である。

その上、国民は振興三倍券を振りかざしいつもより贅沢な旅をする。振興三倍券の恩恵がもっとも得られて単価が高い航空券や人気のアクティビティーの多くはライオントラベルに抑えられてしまい、地元の旅行会社が手配できなくなってしまっているのが現状だ(澎湖県馬公市の民宿経営者の証言)

今後は、販売手数料の減少によって倒産する地元旅行会社が現れてきても何ら不思議ではないだろう。

大手が生き残り、中小が淘汰されるという流れが加速化していく

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さて、もうお気づきのことと思うが、振興三倍券などなくてもこれだけの旅行客がやってくるのだから、換金されるのに時間がかかる振興三倍券は観光地には不要だったのだ。それどころか、振興三倍券の存在によって大手だけが生き残り、中小が淘汰されかねない状況に陥っている。それがアフターコロナの澎湖(ポンフー)の現在の姿だ。

もちろん観光客が戻っていきているのは事実なので、そんなことが贅沢だというのは正論だし、中小のなかの更に中小だと言える民宿は、ライオントラベルの影響を受けることはないのであまり関係ない。むしろそうした事業者の方が多いし、記者が経営する2つの民宿にも今のところ大きな影響は出ていない。それどころか、大手旅行会社が澎湖をPRしてくれることで間接的に受ける恩恵の方が大きいかもしれない。

また、振興三倍券は旅行以外にも広く利用できるため、振興三倍券そのものを否定するものではない。

日本が直面するアフターコロナショックとは

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それでは、アフターコロナで日本の観光業はどうなってしまうのだろうか? 日本も同じように観光振興策として8月に「Go To Travelキャンペーン」が始まる。

まだ詳細が分からないことも多いし、そもそも始まってすらいないので何とも言えないが、日本でも同じようなことが起きる恐れがある。

1つは、換金のライムラグによって中小事業者が利用を断念する恐れがあることだ。

これまで見てきた事例の通り、手元資金がないため中小事業者はGo To Travelキャンペーンに参加できなくなるかもしれない。

この辺は日本政府がどのとうなシステムを採用するかによって異なるが、タイムラグを理由に電子決済に切り替えられない業者があるわけだから、現金になるタイミングによっては十分起こり得ることだ。

2つめは、大手旅行会社が人気のホテルやアクティビティーを抑えてしまい、中小事業者の収入が減る恐れだ。

台湾と比較すると日本は中小事業者の割合が少ない(気がする)ので、台湾ほどの影響はないかもしれないが、これも警戒しなければならないし、消費者も大手が金にものを言わせて作った広告ばかりを見ずに、公平に旅行会社を選ぶ必要があるだろう。

3つめは、オーバーツーリズムの問題だ。

特に、観光客が減ってせっかく自然環境や住民の生活環境が良くなったところほど、コロナ以前よりひどい状況になる恐れがある。

国民としてはただお得に旅行に行けるからと言う理由ではなく、日本経済を回すためにあえて旅行に行くと言う視点で目的地を選んで欲しいと思う。もちろん、上から目線になる必要はないし、感染対策を徹底するのが前提だ。

4つめは第二波である。

なぜ澎湖(ポンフー)でこんなに観光客が増えているのかと言うと、それはひとえに台湾の域内感染者が0だからだ。台湾のアフターコロナは「ゼロ・コロナ」になったが、Go To Travelキャンペーンが始まる頃の日本はあくまでも「ウィズ・コロナ」であることを忘れてはならない。

とは言え、先日台湾から日本に帰国した女性に新型コロナウイルスの陽性反応があったと言う背筋が凍るようなニュースもある。*

もしかしたらゼロではないと言う意識は台湾も引き続き持ち続けるべきなのは言わずもがなだ。

*日本からの報告を受けた台湾政府は、女性の接触者123人を直ちに隔離しCPR検査を行った。その結果全員の陰性が確認されたが、それだけに止まらず女性が通っていた学校で発熱などの症状があった教師および学生90人に対し、過去に感染していないかどうか確認するための抗体検査を実施した。結果、213人全員が陰性と判定されたことから、この女性は偽陰性である可能性が高くなった。

《新型肺炎》日本帰国学生のコロナ感染、接触者ら抗体検査で全員陰性【図】 – ワイズコンサルティング@台湾

私たちは学べる

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私たちは歴史から、そして他国から学ぶことができる。台湾はSARSの失敗からWHOに頼らず独自に判断を行い、多くの国民を護ることに成功した。参考にしたかどうかは分からないが、振興三倍券は日本の給付金の騒動を教訓に生み出したものかもしれない。

そう言えば、澎湖の先行きが暗雲に包まれていた時、ある旅行会社の社長から聞いた話が忘れられない。それはこういった内容だった。

「台湾は中国のことを世界中の誰よりも知っている。だから私たちは水際対策を徹底できた。だけど、他の国は中国のことを知らなかった。だから中国やWHOの言うことを信用してしまった。」

これはややもすると他国の悪口に聞こえるが、今の世界を如実に表している一言だとは思わないだろうか。

アフターコロナに移行した台湾

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今、台湾は世界の中でもっとも早くアフターコロナの世界に移行している。

私たち日本人は、台湾の成功例や失敗例を参考にして、より良いアフターコロナに移行できるように努力を惜しまないようにすべきだろう。

遅かれ早かれ、それがウィズ・コロナだろうが、ゼロ・コロナだろうが、アフターコロナはやってくる。

本稿で指摘した澎湖(ポンフー)で起こっている事実を教訓に、日本では同じようなことが起きないことを願うばかりだ。

なお、私は可能な限りの感染症対策を行うことを前提として、引き続き交流人口の増加を促進することを通じて日本に貢献していく所存である。

アフターコロナを象徴したゴミ収集

このコロナ禍の中で記者にとってもっとも印象的だったのは、ある日のゴミ収集の光景だ。台湾は日本とは違ってゴミ収集場所にゴミを置いておき、それを後で収集車が回収する方式ではなく、ゴミ収集車がやってくる時間に自分でゴミを収集車に入れなければならない。

そのため、ゴミ収集車がやってくる時間になると周辺の住民がいっせいに道路にやってくるので、主ふにとっては1日でもっとも感染リスクが高い時間だとも言える。

当然、コロナ禍のなかでは誰もがマスクを着用してゴミを出しに来ていたのだが、台湾で新型コロナが収束してしばらくしたある日に気づいたのだ。

誰一人としてマスクをしていないことに。

ゴミ出しはほぼ毎日の日課だし、一日の終盤に行う象徴的なイベントだ。自分も含めて誰もマスクをしていない情景を見て、ああ、元どおりの生活が戻りつつあるんだなあ、としみじみ感じたのものである。