「国立」故宮博物院展とポスターに書けなかった理由、台湾政府が猛抗議する理由。
今月6月24日から東京国立博物館で開催される特別展「台北国立故宮博物院」のPRに使用されているポスターに正式名称である「国立」が書かれていないとして、台湾政府が国立博物館に猛抗議しているニュースが報道されています。
その抗議の勢いたるや、馬英九総統が声明を発表し、訂正されない限り展覧会を中止すると言い出すほどです。
東京国立博物館の「国立故宮博物院」展ポスターに台湾が抗議 「展覧会中止も」
最初にこのニュースを目にしたときは、そんな細かい事にこだわるなんて、なんでこんなに怒っているのだろうかと思っていました。
しかし、台湾人のパートナーの一言で、この抗議の裏に重要な外交問題が隠されていることに気づかされてしまいました。
それは、「ポスターに書くことができなかったから、わざと書かなかったのでは?」というものです。
今回の件は、なぜ台湾政府がそんなに怒っているのか理解できない方が大半だと思います。
そこで、なぜポスターに「国立」の文字を入れなかったのかという推測と、なぜ台湾政府がこれほどに怒っているのかということについて、私なりの推測ではありますが、わかりやすくご説明します。
台湾は国家ではないという悲しい現実
皆さんは、台湾と日本の間には正式な国交がないということをご存知でしょうか。
日本は、台湾はあくまでも中国の領有する地域であるという認識をしています。
これは、中華人民共和国と中華民国(台湾)が分裂した際に、どちらか一方を中国と認めなければならなかった経緯があったからです。
その際に、日本は中華人民共和国を中国と認めました。
とすると、日本としては国立故宮博物院展のポスターに、「国立」と入れてしまうと台湾を一国とみなすことになってしまうと判断したのではないでしょうか。
それも、開催する博物館は日本を代表する東京国立博物館です。
日中関係が泥沼化している今、もしこの展覧会で公式に「国立」という言葉を入れてしまったら、中国との関係は更に悪化するかもしれません。
※ソースが見つからず申し訳ないのですが、これについては読者から“日本政府(東京国立博物館)は「國立」の名称表示を認めた一方、協賛メディアは、「國立」の表記を認めなかった”とのメッセージをいただきました。
今後の顛末が、日中関係に影響を及ぼすかもしれない。
とはいえ、東京国立博物館の公式サイトでは「国立」と記載されていたり、一方で展覧会の公式サイトでは「国立」が記載されていなかったりして態度がはっきりとしません。
ニュースサイトのフォーカス台湾の報道によると、今回の特別展示にあたっては、台湾側は開催の前提条件として、中国による美術品の差し押さえを防ぐために「海外美術品等公開促進法」の制定や、「国立」の文字の使用を求めていたとのことです。
最終的には、「国立」の文字を入れたポスターに貼り変えるなどの承諾を受け入れる方向で動いているようですが、この件について中国はどのように考えるか心配です。
今回の件は、なぜ台湾政府がそんなに怒っているのか理解できない方が大半かもしれません。
しかし、台湾にとって「国立」の文字が入っているかどうかは、まさに自国の存在を証明する大切なことなのです。
日本と台湾の双方の立場を知った上で、このニュースの展開に関心を持っていただければと思います。
※記事公開時の内容が「日本が国立(國立)表示を認めなかったかのように記載されていましたが、結果として東京国立博物館が「国立(國立)」表記を認めたことと、読者から内容が不適切だと指摘を受け、一部記事内容を訂正いたしました。