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狭さは想像力を刺激する

台湾の友人が澎湖に遊びにやってきた。澎湖は日本で言えば沖縄的な場所なので、台湾人なら誰しもが知っているが、来るのは初めてという人も少なくない。そんな時は、ぼくの民宿に格安で泊まってもらうのが恒例だ。

…と言いたいところだが、幸か不幸かオンシーズンの部屋は満室になっていることがほとんどなので、結局知り合いのホテルに泊まってもらうことになるのがちょっと申し訳ない。

この前、澎湖に伍佰という台湾では超有名な歌手がやって来て、2万人近い人が野外コンサートを楽しんだという話を日本の知人にしたら「別の星の話のようです…」と言われた。このご時世では考えられないことだが、これが台湾の現状なのだ。

ところで毎回ガイドをしていて感じることなのだが、澎湖はけっこう広い。

広さで言うと山手線の内側2つ分くらいしかないのだが、海岸線が長いので移動に時間がかかる。その上、島の真ん中に大きな湾があるので余計に広く感じる。

そして観光スポットも存外に多い。海はもちろんのこと、柱状玄武岩群、台湾一の密集度を誇る寺院、古民家集落、戦績などバラエティも豊かだ。

しかも浜ひとつ取ってみても、砂浜、サンゴの浜、玄武岩の浜、いい感じの流木が拾える浜、シーグラスがいっぱいの浜、星砂が取れる浜などなど、それぞれの浜にそれぞれの良さがある。

絶海の孤島ということもあり、渡り鳥もたくさん見ることができる。なかには、ヒガシシナアジサシという世界に数10羽しかいないとされている幻の鳥までやってくる。

そんな島なので、小さくともいろいろな角度で楽しめるのがいいところだ。新しい趣味を作れば、今までなんともなかった場所が特別な場所になる。これはかなり不思議な体験だ。

つまり狭いところというのは、案外広いところにいるより想像力を鍛えさせてくれるのかもしれない。

広いところには人もいるし物もある。会いたい人に会えるし物もすぐに手に入る。ただ、選択肢が多いと人間は逆に不自由さを感じるというもの。

普段の暮らしと正反対の暮らしをするのは脳にとってもいい刺激を与えることだろう。今は難しいが、数年後に元通りの世界に戻った暁には、ぜひ数週間くらい羽を伸ばしに地方に行ってみて欲しいと思う。

数週間も休みを取れないと言う人ばかりだろうが、その数週間を惜しむことで今後の人生を無駄にする可能性が少しでもあると思うなら、思い切る価値はあるだろう。人生は一度きりなのだから選択肢を増やしておくに越したことはないはずだ。